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橋本ゼミ インタビュー課題 2011年度前期

宮澤知樹

 


 

@学生向けのマンションを作るにあたって、一般向けのマンションとは違って特にどのような点に工夫や注意をされていますか。

 

●マンションの立地に関して

 北大のように規模の大きい大学の付近に学生専用のマンションを建設する場合は、空き室がたくさん出てしまうリスクは小さいので、そのような場所に建設する。一方で、短大など規模の小さい大学の周辺に学生専用のマンションを建てるとなると、空き室が出てしまうリスクが大きくなってしまう。このため、小規模であるが複数の大学がある土地にマンションを建てたり、入居人数が確保できないような土地では一般向けにも募集を行っている。それゆえ、学生向けに建てたマンションでありながら、ファミリーでも暮らせるような間取りのあるマンションもあります。

 

●部屋のつくりに関して

 たとえば、北海道なら5万円で借りられる部屋のつくりを東京のマンションに施してしまうと910万円になってしまいます。そのため、地域にあった立地や傾向を調査したうえで部屋のつくりを決めています。また、学生向けの間取りにする際には、ネットや家具の配置を狭い部屋でどのように行うかや、服装による収納の広さを考慮しています。一般の方の独り暮らしとは異なり、特に学生の場合は勉強用のデスクを狭い部屋に置いたりする場合があるのでスペースを無駄にしないような間取りを考えなければなりません。また、入居する学生の性別によっても間取りには違いが出ます。たとえば、女子大の多い地域に建設する学生専用マンションは、女性ということで料理の頻度を考えてキッチンスペースを広めにしたり、クローゼットを大きくしたりしています。逆に、男子学生の多い地域に建設する学生専用マンションはキッチンやクローゼットよりも部屋の広さを重視した間取りにするといった工夫を凝らしています。

 

 

A事業内容の1つである「学生マンション及び大学福利厚生施設の経営コンサルタント」について具体的にその内容をお伺いします。

 

●東京地区:大学が寮をつくりたいという場合、大学は不動産分野に関しては精通しているわけではないので、当社が大学と共同でそのプロジェクトを行い、造りと運営に関するサポートを行います。こうすることは双方にメリットがあります。大学側は入学人数を増やすために学生の生活環境の面でもしっかりとした体制をつくることができますし、当社としても、大学と良好な関係を持つことで、その大学が入学した生徒に当社を紹介してくれるような制度を設けることができたりします。

 

B通常の学生向けマンションに加え、さらにGrand E'ternaシリーズを企画するに至った理由やその戦略は何ですか。

 

●どのような市場にも当てはまることですが、今の市場では似たり寄ったりの商品が多くなっています。しかしながら、多少高価になってしまっても質の点で価値が高いもの人が惹かれるようになっている「こだわり投資の時代」でもあります。建物に関しましても、それは同じことです。今の日本は家が余っています。そのなかで、競争に勝って入居者を確保するためには他社と同じことをやっていてはいけないというのが経営陣の判断でした。そして今の日本では一昔前よりも、親が子供に投資する額が増えています。そこで医者の子供など、富裕層をターゲットにした高級学生マンションとしてGrand E'ternaシリーズを考案しました。これにより、建物自体が当社の名前より先に有名になり当社のブランド商品になって会社の広告役となる存在になりました。

 

 

C311日の震災の影響で電力問題が活発に議論されていますが、オール電化については今後どのようなビジョンをお持ちですか。

 

●オール電化をすべて廃止したり、すべてオール電化にしたりするなど、ビジョンを極端に変更することはありません。今まで通り、マンションのオーナーの考えや地域性を考慮してその割合を決めていきます。ただ、ソーラーパネルなど有事の際に自家発電ができる設備の検討はしています。

 

D大学生協等、他に学生向けの物件を取り扱っている店舗がございますが、それらと御社の管理される物件の違いや御社の強みはどのような点ですか。

 

●インテグラボードによってマンション館内の各防犯カメラの映像を部屋からリアルタイムで見ることができます。また当社は「不動産業からサービス業へ」をモットーにしており、生活に対してのサービスにも力を入れています。具体的には、スポーツクラブの割引券の配布・そのマンションに入居している方へ専用自転車の貸し出し・資格試験の割引などがあります。さらに、物件の予約に関しても強みがあります。たとえば、それぞれ別の地域にある大学を受験した場合、片方の地域の店舗からテレビ電話でもう片方の大学がある地域の店舗とやりとりして同時に予約することができます。入学できるのは一校だけですので、予約や手続きにかかった費用はどちらの物件になったとしても無駄になりません。第一志望の大学の地域の物件の予約や手続きに支払ったお金は、第一志望の大学が不合格となっても合格した第二志望の大学の地域の物件の予約にそのまま使うことができ、差額は返金したりすることも可能です。

 

 

E知人などからの情報で、御社はアルバイトの雇用において北海道の給与水準よりも高い賃金を設定していらっしゃるようですが、それはなぜですか。

 

●当社のアルバイトは店舗での内勤と主に受験シーズンに行われているチラシ配布の2種類があります。賃金が高いのはチラシ配布の方です。チラシ配布において高い賃金を設定している理由として挙げられるのは、短時間であり、寒いシーズンに外で配るからです。各大学の入学試験当日に受験生やその保護者にチラシを配るので、試験前と試験後の受験生が出入りする短い時間にしか仕事がなくさらに寒いので、安い賃金だとアルバイトの募集をかけても「寒いし少ししか稼げないから」という理由で人手を確保することができないのです。これを防ぐために、受験シーズンのチラシ配りに関しては賃金を高く設定しています。

 

F学生向けのマンションを新しく建築するとなると、景観問題や土地の問題が避けられない課題だと思われますが、それはどのように解決されていますか。

 

●あいさつはもちろん、説明会や説得を繰り返すことになります。マンション建設の事業主はオーナーなので、オーナーが建設予定地周辺に住んでいる方を対象とした説明会を開きます。そして当社も、周辺の方のご迷惑にならないような設計の話し合いをオーナー側と何度も重ねています。

東京地区の事例になりますが、一番話を進めるのが難しかったのが、東京都文京区の田中角栄氏の邸宅がある高級住宅街での建設問題で、近隣の方の了承を得るのが大変でした。

 

Gなぜ学生向けのみの展開なのですか。

 ●学生向けのみに展開することには、ターゲットを絞れる点、入試日が決まっているので宣伝がしやすくコストも抑えられる点、大きな大学などは特にですが毎年進学者数がだいたい決まっていて需要が安定している点などのメリットがあるからです。

 

H施工も含めたトータルでの展開はしないのですか。

 ●建設会社にお金を払うのは事業主であるオーナーです。だから、オーナーがひいきにしている建設会社もあったりするので、建設部門を持っていても安定した需要がなければ無駄になってしまいます。なので、当社はあくまでも、紹介・案内・潤滑油としてのポジションでいろいろな意向を汲むことにしています。

 

Iトータルプロデュースによる利点、欠点は何ですか。

 ●一社による展開をすることで、経験を積んだ各部門同士での意志疎通が容易になります。

 

J空室率をどのようにおさえていますか。

●学生のニーズにあった部屋を提供することはもちろん、仲介手数料を無料にしたり、付き合いのある大学に物件を紹介してもらうなどしています。また、諸条件にたいして妥協しても入居してもらうこともあります。長い目で見たら空室のままよりは収益があるからです。

 

K各都道府県には店舗展開しないのですか。

 ●基本的には政令指定都市など大きな都市を中心に展開しています。それ以外では、マーケット調査をして展開の判断をします。地元民ばかりが通うような大学周辺なら展開しても需要は見込めませんし、同業他社がすでにその地域を牛耳っていたら展開は困難です。

 

L生活そのものに関与しないサービスまで提供なさるのはなぜですか。

 ●会社のモットーが、「不動産業からサービス業へ」であり、大学生活をさまざまな面からサポートしたいからです。そして、同業他社にはない+αによって退居を防ぎたいのです。

 

感想

 最初は、学生向けに絞った事業展開と聞いて、少子化が進んだら今後事業として成り立つのだろうか・・・?

と思っていたが、そこにはしっかりとした戦略があり、そして「不動産業からサービス業へ」という会社のモットーは斬新であった。